探偵ナイトスクープ、13年前に出会った少年に会いたい
探して欲しい人がいます。
今から13年前の2004年、当時自転車で日本一周していた時に、福島県で出会ったある少年です。南相馬市に来た時に自転車で走っていると、私の後ろに自転車で着いてくる少年がいるのです。おかしいと思い声をかけてみたら、家出をしたらしい。13歳で中学一年生。本来なら警察か家に連れて帰らすところだが、1日だけ冒険をさせてあげようと思い、自転車の旅を始めた。少年には内緒で、親に電話をして迎えに来てもらう約束はしておいたが、少年にとって忘れられない思い出となる1日になればいいなと思った。いろんなところをひたすら走りました。そして出会った場所から50キロ離れた場所で、母親に迎えに来てもらい少年との旅は終わりました。
あれから13年が経ち、あの少年にもう一度会いたい。あの1日は、彼にとって忘れられない1日になっているのか聞きたい。
福島県南相馬市。震災のあった場所なので、少年の安否も気になるところだ。
依頼者が21、2歳のときに、自転車で日本一周の旅をしていた。
福島県南相馬市の、公衆トイレの前にあるテーブルの上で野宿していた時に、少年に出会った。
当時、このテーブルの上で野宿していたとか。そりゃあ、からだ痛いよねえ。
当時の日記がある、すごく細かい文字で書いてある。
几帳面だなあ。
ここから、依頼者の日記を読みながら、当時の出来事を回想。
『少年に、家出か?て聞いたら、うなずいた』
そのまま帰れ、て言うても無理そうやから、それやったらすごい体験させたろと思って、着いてくるか?て聞いたら、うん、て言う。
とても純粋そうな男の子。
一生の思い出になるかな、と、とことん1日付き合わしたろと思って、着いてこい、いう感じで。
二人で走ってたら、「菊次郎の夏」を思い出す、そんな感じやった。
写真をいっぱい撮ってあげる。この子にとってこの日は一生忘れられない思い出になるって思ったから。
夜8時、母親と連絡がつき二人の旅は終了。
僚太くんの人生の中で(その日が)どんな1日だったか、を確かめたい。
手がかりは、住所と電話番号。だけど震災直後、電話は繋がらなかった。
住所の団地に行ってみるも、ひと気がなかった。
役所に聞いてみた。
震災の被災者を支援する部署で聞いてもらう。
震災の時、僚太くんは、奥様の家族と避難していたため、奥様の実家と連絡がとれた。
そして、奥様の連絡先を教えてもらい、(奥様の)携帯に電話する。
とにかく僚太くんは無事だった、良かった良かった。
仕事終わりの僚太くんに、待ち合わせ場所に来てもらうように伝えてもらった。
待ち合わせ場所で待っていると・・・・黒い乗用車が。
僚太くん、登場!!
13年前とあまり変わらない雰囲気の僚太くん。
純朴そうな青年だ。依頼者は、「良かった~~」と言って。涙、涙。
「ずっと(僚太のことが)気になってて。あんまり変わってないな、雰囲気は。僚太の成長が気になってて・・・忘れられんかった・・・」
僚太くんは、震災のとき、福島第一原発の近くの職場から、南相馬市へ国道6号線を車で走っていた。
当時、仕事が終わって、帰り道、6号線を走ってるときに地震がきた。
津波がくるのが分からないで走っていて、自分の(車の)6台くらい前から(津波に)流されて。(自分も)津波にもっていかれて・・・
「よく生きてたな」と竹山も、なみだ・・・
「良かったな」と・・・
そして、
同じ場所を一緒に自転車で走りたい。
13年ぶりの自転車の旅。当時の「菊次郎の夏」のような場所で。
震災で風景は変わってしまったが・・・
僚太くんも、6号線を走ると思い出す、とか。
そして、もうひとつの思い出。
13年前と同じ場所で、キムチ焼きそばを作る。
最後にかつおのふりかけが隠し味。
僚太くんも、あの後何回も作ったけどこの味は再現出来なかった、とか。
みんなで、食べる。
僚太くん「うんこれだ、この味」
そして、最後に依頼者が僚太くんに聞きたかったこと。
「あの日、僕と出会った1日は僚太にとってどんな1日だったのか」
僚太くん「もう、それは、言われるまでもなく、人生で一番の思い出です」
それを聞いた依頼者、涙、涙・・・
「俺も(人生で一番の思い出)や」
依頼者「うれしいです・・・これからも、多分お互いいろいろあるやろうけどな、この日を思い出していけたらな、とは思ってます」
最後は、固い握手の二人。
あの当時、成人していた依頼者、おそらく大学生最後の夏の思い出に、日本一周していたのだろう。
対して、僚太くんは13歳の中学一年生。お母さんと二人暮らし、家出の理由は家庭の事情もあったのかもしれない。
依頼者にしてみれば、純朴な田舎の少年に素敵な思い出を作ってやろうと思った。
旅が終わった後、『ああ、俺ええ事したなあ、僚太もいい思い出になったやろ』とか思ったのかもしれない。
でも、僚太くんは、どうだったのか。
ここが多分、依頼者が一番気になってたことだよね。
自分だけが、自己満足の思い出に浸っていたのではないか。
僚太にしたら、大人の勝手な気まぐれ、と思ったのではないのか、と。
だから、「お母さんが迎えに来た時、俺のこと恨んだ?」て聞いたんだよね。
僚太くんは、「うわっ、マジか」とは思ったけど、今はそれで良かったと思っている、と言った。
13歳の少年の夏の家出の1日、あの後、母親からしこたま怒られた、夏の日の思い出。
大学生の、日本一周の旅の夏の日、少年との偶然の出会いと別れ。
二人にとって、同じような素敵な思い出、には間違いないけど、でも(全く)同じ、では無いんだよね、きっと。
でも、でも、
誰にも分からない、この二人にしか分からない「思い出」「この日いちにちだけの想い」「大事な出来事」
これだけは、間違いないのだ。
竹山「始まりだね、これから」
あの後お互いがお互いを探していた、ということも分かった。
震災もあったし、本当に無事で会えて良かった。
普通なら家出少年を、変な面倒に巻き込まれたくないし、素性も分からないし、1日思い出を作ってやろうなんて思わないよ~~。
依頼者は心を常に開いている人なんだろう。だから僚太くんも着いてきたのかも。いい人そうだから、そんな直感があったのかも。そんな人にはやっぱりいい人が寄ってくる。いい出会いが寄って来る。
そうして、人生で忘れられない「思い出」を作ることができる。
僚太くんもまたいい青年なのよ。
これは、確実にナイトスクープ史上に残る名作だね。
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